前回の記事で、青色申告特別控除の55万円・65万円を受けるには、貸借対照表を確定申告書に添付する必要があると書きました。
今回は、その貸借対照表がなぜ完成しないのか、という話です。
原因の多くは、棚卸にあります。
そして棚卸は、在庫を持つせどり・物販にとって、家計簿型のテンプレートでは絶対に終われない工程です。
仕入れた金額は、全額が経費にはならない
まず、いちばん誤解の多いところから確認します。
年間で100万円分を仕入れ、そのうち70万円分が売れ、30万円分が売れ残ったとします。
このとき経費になるのは、100万円ではなく70万円です。
売れ残った30万円は、経費ではなく資産として翌年に持ち越されます。
まだ「費用」になっていない、あなたの財産という扱いです。
計算式にすると、次のようになります。
期首棚卸高 + 当期仕入高 - 期末棚卸高 = 売上原価
つまり、期末に在庫がいくらあるかを確定させないと、その年の売上原価が出ません。
売上原価が出なければ、利益も出ません。
「仕入れた分だけ経費にした」という記帳は、利益を実際より少なく見せることになります。
棚卸をしないと、貸借対照表は埋まらない
もうひとつの問題が、貸借対照表です。
貸借対照表の資産の部には、12月31日時点で持っている財産を並べます。
現金、預金、売掛金、そして商品です。
この「商品」の欄に入るのが、期末棚卸高です。
在庫金額を出していなければ、この欄は空欄のままになります。
空欄のまま提出すれば、実際には30万円の在庫を持っているのに、財産がないことになってしまいます。
複式簿記で毎日きちんと記帳していても、棚卸を飛ばした時点で決算書は完成しません。
ここが、記帳ソフトを入れただけでは解決しない部分です。
せどりで棚卸が難しい3つの理由
在庫を数えるだけなら簡単そうに見えますが、せどり・物販では次の3点が壁になります。
①同じ商品を違う値段で仕入れていることです。
同一商品を3回に分けて仕入れ、単価がそれぞれ違う場合、期末に残っている1個をいくらで評価するのかが問題になります。
所得税では、評価方法の届出をしていない場合、最終仕入原価法が適用されます。その年の最後に仕入れた単価で、期末在庫を評価する方法です。
②送料の扱いです。
仕入れにかかった送料は、商品の取得価額に含めるのが原則です。
一方、売れたときに発生する発送料は、取得価額ではなく販売にかかる経費として処理します。
同じ「送料」でも、入口と出口で扱いが違います。
③在庫の一覧が手元にないことです。
仕入れ表と売上表が別々に管理されていると、何が売れ残っているのかを突き合わせる作業が発生します。取引件数が増えるほど、この作業は現実的でなくなります。
実地棚卸で確認すべきこと
帳簿上の在庫が出たら、次は実際に数えます。
これが実地棚卸です。
タイミングは12月31日時点が原則ですが、その日に全数を数えるのは現実的ではありません。
年末の数日でまとめて確認し、その間の入出庫を調整するのが一般的です。
このとき、自宅の手元にあるものだけを数えて終わりにしないよう注意が必要です。
倉庫サービスに預けている在庫も、自分の資産です。
仕入れて発送済みだがまだ手元に届いていない商品も、所有権が移っていれば在庫に含まれます。
逆に、売れて発送済みの商品は、年内の売上として計上したなら在庫から外れます。
帳簿の数と実際の数が合わない場合、差の原因を確認します。
破損して処分した、サンプルとして自分で使った、記録の漏れがあった。
理由によって処理が変わりますので、原因ごとに把握しておくことが大切です。
私のテンプレートでの対応
売上粗利管理帳簿では、仕入れの登録と売上の登録を同じ商品データに紐づけています。
仕入れた商品が売れると在庫から落ち、売れていないものが在庫として残る仕組みです。
期末時点で残っている商品と、その金額が一覧で出るようにしてあります。
そのため、年末に倉庫を開けて数え直す前に、帳簿上の在庫がいくらあるかを画面で確認できます。
実地棚卸との差異を確認する起点になります。
在庫金額はそのまま決算書の期末棚卸高に連動し、貸借対照表の商品欄に反映されます。
まとめ
- 売れ残った仕入れは経費ではなく資産として繰り越す。
- 期末棚卸高が出ないと売上原価も利益も確定しない 。
- 貸借対照表の商品欄は棚卸をしないと埋まらない 。
- 届出がなければ期末在庫は最終仕入原価法で評価する。
- 仕入れの送料は取得価額、販売の送料は経費になる。
棚卸は、確定申告の直前に思い出して慌てる工程です。
しかし本来は、日々の仕入れと売上の記録が正しく紐づいていれば、自動的に出てくる数字です。
なお、この記事は制度の一般的な説明です。評価方法の選択や個別の処理については、国税庁の情報を確認するか、税務署・税理士にご相談ください。
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