青色申告特別控除の65万円を受けるには、複式簿記に加えて、e-Taxによる電子申告か、電子帳簿保存のどちらかが必要です。
そして令和9年分からは、最高額が75万円に引き上げられます。
その75万円の条件にも、やはり電子帳簿が出てきます。
今回は、この「電子帳簿」が何を指しているのかを整理します。
結論を先に書くと、Excelで作った帳簿はここに届きません。
テンプレートを売っている側として、その限界を正直に書きます。
電子帳簿保存には2つの段階がある
電子帳簿保存という言葉は、実は2つの水準を含んでいます。
ひとつは、帳簿を電子データのまま保存することそのものです。
一定の要件を満たせば、紙に印刷せず保存できます。
もうひとつが、優良な電子帳簿と呼ばれる上位区分です。
控除額の要件として認められるのは、こちらです。
つまり「Excelで作っているからデータで保存している」という状態は、この要件を満たしません。
ここが混同されやすいところです。
優良な電子帳簿に求められること
国税庁が公表している電子帳簿等保存制度の資料では、優良な電子帳簿の要件として次の3点が挙げられています。
- 訂正・削除・追加の事実と内容を確認できるシステムを使用していることです。
一度記録した内容を後から直した場合に、その履歴が残る必要があります。 - 帳簿間での記録事項の相互関連性の確保です。
仕訳帳と総勘定元帳のように、関連する記録を相互にたどれる状態が求められます。 - 検索機能の確保です。
取引の日付・金額・相手方で検索できること、範囲を指定して条件を設定できること、2つ以上の項目を組み合わせて条件を設定できることが求められます。
そのうえで、税務署への届出書の提出が必要です。
この届出は「適用を受ける年分の法定申告期限まで」に提出すればよいとされています。
年の初めに出しておかなければならない、というものではありません。
ただし、帳簿そのものは年の最初から要件を満たして運用する必要があります。
年の途中で気づいて設定を変えても、その年分は間に合いません。
Excel単体では、現実的に満たせない
ここで正直に書きます。
私が販売しているExcelテンプレートは、優良な電子帳簿の要件を満たしません。
理由は明確で、Excelはセルの内容を上書きできてしまうからです。
訂正・削除の履歴を確実に残す仕組みを、マクロで完全に担保することはできません。
ファイルをコピーして別名保存すれば、履歴そのものを持たない複製が作れてしまいます。
商品の売り文句としては、要件を満たすと言えたほうが有利です。
しかし、満たしていないものを満たすと書けば、それは購入した方を不利な立場に置くことになります。
要件を満たす市販ソフトには、JIIMAという団体の認証マークが付いています。
優良な電子帳簿を目指す場合は、そちらを検討してください。
令和9年分からは、これが75万円の条件になる
令和8年度税制改正により、令和9年分以後の青色申告特別控除は最大75万円になります。
75万円を受けるには、複式簿記と期限内提出に加えて、e-Taxによる申告と、優良な電子帳簿またはデジタルシームレス保存のいずれかを満たす必要があります。
デジタルシームレス保存とは、請求書等の電子取引データを自動で保存し、帳簿に自動連携する仕組みを指します。
一方、複式簿記とe-Taxだけであれば65万円です。この10万円が、帳簿の作り方そのものによる差ということになります。
Excelで帳簿を作っている場合、現実的な到達点は65万円です。そこは正直にお伝えしておきます。
e-Taxを始める2つの方法
その65万円を取りにいくうえで必要なのが、e-Taxです。利用開始には2つの入口があります。
- マイナンバーカード方式です。カードと、読み取りに対応したスマートフォンまたはカードリーダーを使います。
- ID・パスワード方式です。税務署で本人確認を受けて、専用のIDとパスワードを発行してもらいます。
どちらの方式でも、確定申告書等作成コーナーから作成した申告書をそのまま送信できます。
はじめての年は操作に時間がかかりますので、申告期限の直前ではなく、余裕のある時期に一度画面を触っておくことをおすすめします。
私のテンプレートでの対応
売上粗利管理帳簿では、決算書のシート上に控除額の選択欄を設けています。
そのすぐ横に、上位の控除額を選べるのはe-Tax等の要件を満たす場合であることを注記しました。
テンプレート側で判断できない条件だからこそ、選ぶ人が見える場所に条件を置いています。
また、優良な電子帳簿の要件を満たす製品ではないことも、商品説明に明記しています。
まとめ
控除額の要件になるのは「優良な電子帳簿」という上位区分 訂正削除履歴・相互関連性・検索機能の3点が求められる 。
届出書は適用を受ける年分の法定申告期限までに提出すればよい 帳簿自体は年の最初から要件を満たしている必要がある 。
Excelでこれらを担保することは現実的に困難 であり、Excelで帳簿を作る場合の到達点は、複式簿記とe-Taxによる65万円の控除となる。
要件を満たさないものを、満たすと書かない。
テンプレートを売る立場として、そこだけは守りたいと考えています。
なお、この記事は制度の一般的な説明です。
要件の詳細や最新の取り扱いについては、国税庁の情報を確認するか、税務署・税理士にご相談ください。
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