確定申告のための帳簿と、次の仕入れを決めるための帳簿。
この2つは、同じデータから作れるはずなのに、多くの場合バラバラに管理されています。
前回まで、青色申告の控除額と棚卸について書いてきました。
今回は、申告から一歩離れて、経営の側の話をします。
決算書を完成させても、儲かっている商品は分からない、という話です。
決算書に載るのは、事業全体の数字だけ
青色申告決算書には、売上高と売上原価が並び、その差額として売上総利益が出ます。
しかしこれは、事業全体を合計した数字です。1年間で何百件の取引があっても、決算書の上ではひとつの金額に集約されます。
そこから分かるのは、事業として黒字か赤字かということだけです。
どのジャンルの仕入れが正解だったのか。
どの商品が資金を寝かせただけだったのか。
決算書は、その問いには答えてくれません。
粗利を削るのは、仕入れ値だけではない
商品ごとの利益を考えるとき、多くの方が「売値マイナス仕入れ値」で計算します。
しかし実際には、そこに含まれない支出が複数あります。
販売手数料は、多くのプラットフォームで売値に対する一定割合がかかります。
売値が高いほど、手数料の絶対額も増えます。
発送にかかる送料は、商品のサイズと重量で決まります。
仕入れ値が同じでも、かさばる商品ほど手取りは減ります。
梱包材も同様です。
ダンボール、緩衝材、テープ。
1件あたりは数十円でも、取引件数が増えれば無視できない金額になります。
ポイント還元やクーポンを使って仕入れた場合は、実質的な仕入れ値が表示価格と異なります。
これらを差し引いて初めて、その商品が本当にいくら残したのかが見えます。
利益が出ていたつもりの商品が、赤字だった
具体例で考えてみます。
2,000円で仕入れた商品を、3,500円で売ったとします。
売値マイナス仕入れ値では、1,500円の利益に見えます。
ここから販売手数料が10パーセントで350円。送料が大きめのサイズで750円。
梱包材が60円。
差し引くと、手元に残るのは340円です。
1,500円のつもりが、実際には4分の1以下でした。
さらに、この商品が仕入れから3か月売れ残っていたとすれば、その間2,000円が在庫として拘束されていたことになります。
回転を考えれば、実質的にはほとんど利益が出ていません。
売値マイナス仕入れ値だけを見ていると、この構造に気づけません。
商品単位で記録すれば、両方が同時に出る
ここで重要なのは、商品ごとの粗利を出すために、決算書とは別の帳簿を作る必要はないということです。
1件の取引に対して、仕入れ値、売値、手数料、送料、梱包材を記録しておけば、その合計は決算書の数字になります。同時に、1件ごとの内訳は商品別の粗利になります。
必要なのは、入力を2回することではなく、最初から取引単位で記録しておくことです。
多くの無料テンプレートが対応していないのが、まさにここです。
集計は税務向けにできていても、1件ごとの利益を追う設計になっていません。
金額よりも、回転を見る
商品ごとの粗利が出るようになると、次に見えてくるのが時間の要素です。
1件で1,000円残る商品と、1件で400円しか残らない商品。金額だけを見れば前者が優れています。
しかし、前者が売れるまでに4か月かかり、後者が2週間で売れるとしたらどうでしょうか。
同じ資金を回した場合、後者のほうが年間で多くの利益を生みます。
在庫は、売れるまで資金を拘束します。仕入れた瞬間に、その金額は次の仕入れに使えなくなります。手元資金が限られている個人事業主にとって、この拘束期間は粗利率と同じくらい重要な指標です。
仕入れ日と売却日を記録しておけば、商品ごとに何日で売れたかが分かります。ジャンル別に平均を出せば、どの分野が資金を寝かせやすいかが見えてきます。
粗利の金額、粗利率、そして回転日数。この3つを並べて初めて、仕入れの判断材料になります。
私のテンプレートでの対応
売上粗利管理帳簿では、売上の登録時に販売手数料と送料を入力できるようにしています。
これらは決算書側では経費として集計され、同時に取引単位の粗利計算にも反映されます。
同じ入力が、申告と経営分析の両方に使われる形です。
商品ごと、月ごとの粗利を確認できるため、どのジャンルを続けるかの判断材料になります。
まとめ
決算書に載るのは事業全体の売上総利益だけ 販売手数料・送料・梱包材を引かないと実際の利益は見えない。
売値マイナス仕入れ値では赤字の商品を見逃す 取引単位で記録すれば申告用と分析用の数字が同時に出る 。
1件ごとの粗利を追う設計が、物販の帳簿には必要です。
帳簿は、税務署に出すためだけのものではありません。
次の仕入れを決めるための道具でもあります。
なお、この記事は一般的な考え方の説明です。
税務上の処理については、国税庁の情報を確認するか、税務署・税理士にご相談ください。
せどり・物販向けの売上粗利管理帳簿は、BOOTHで公開中です。
仕入れから在庫、商品ごとの粗利、青色申告の決算書作成までを1つのExcelファイルで管理できます。



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